拒否は認知機能のせいじゃない

こんばんは、sumaです。



今日は実践的なお話です。





実際に起きたことを、解明してみようと思います。


登場人物は、5人です。


本人、医師、看護師、PT

そして、僕はOTで、解明師です。


依頼は、PTからでした。


PT「先生(医師)が、来週あたりに家に帰すって言うんです。それでリハに起こせって。でも、本人は拒否もあって、家族は介護できないって言うし、どうしたら、、、」


この依頼について、少し整理しますと


・方向性で医師とPTに意見相違がある
・リハの内容は医師、PTと本人で対立
・本人の介助量と家族の介護力の不一致

という問題が生じていることがわかります。

そこでまずPTさんには、


・方向性を決定づける情報の整理
・リハ内容の検討
・家族の介護力から妥当な目標設定の検討

を提案しました。

しかしながら、PTさんも信念対立真っ只中で混乱していますので、代わりに僕が評価しに行くことになりました。


そして、訪室してみると、


本人は落ち着いていました。
拒否の理由は、円背、腰椎の圧迫骨折、褥瘡から生じる、疼痛が主な原因でした。

痛いから、動きたくないと。

まあ、安静でもNRS4-6くらいの痛みだそうですが、動くと余計に痛いとのことでした。


また、年齢と90歳代後半で、本人も随分と生きたもんだと。

夫が介護をしてくれているが、夫も身体が悪くて、お互い様だと話していました。

残念なのは、子供たちに介護を断られていることですが、

ご本人も長年、お仕事をしっかり頑張ってきたそうで、

おそらく、その生き方をご家族も学んでいるんだろうと思いました。つまり、仕事を一番に子供たちも頑張っているんだと納得しました。

まあ、ご本人もわがままな部分もあって、施設に行くよりは家にいた方がいいと。

ただ、夫の体のつらさを考えてもらうと、少し施設でも仕方ないか、という考えが本人に芽生えてきました。


このように、ご本人には明確な意志がある状況だったのです。


そんでもって、ややこしくしている要因の1つに、看護師さんの対応がありました。


これだけ意志を明確な90歳代の人を、


認知症があると決めつけて対応してたんです。


認知機能の低下がないとは言いません。


日時の見当識はズレていますし、

おそらく記憶保持も長くは持ちません。


でも、おそらく拒否や暴力行為が生じるのは、やっぱり対応が悪いんだと思います。


いきなりよくわかんない人に、オムツ見られたり、起こされたり、ご飯食べて、なんて言われたらどう思います?


僕は間違いなく怒ります。


しかも、認知症だと決めつけられた感じがしたら、もう喋りたくもないすね笑


その感情は残ります。


まあ、この点については、看護師がいるところで、PTに、認知機能の低下はあるけど対応は丁寧に、しっかり状況を伝えながら関わった方がいいと指導しました。


そして、今回の落とし所は、

方向性は、家族の意向を踏まえれば、施設が妥当と考えました。

しかし、本人は見捨てられた、と感じているようなので、家にいるよりも施設で過ごすことのメリットというか、意識変革ができるといいと思います。


あ、認知機能の低下があっても、その場で納得できるかどうかは重要ですよ。
本人が納得できるストーリーが必要なんです。

次に、リハの内容ですが、
PTは起こす、立たせる、歩かせる、みたいなイメージでいたらしいのですが、
年齢、疼痛とADLレベルからは、二次的な疼痛を予防するためのROMは必要ですが、

無理な離床は精神衛生上も宜しくないので、自制範囲の疼痛でリクライニング車椅子に乗れたりすることを一先ずの目標に置き、これ以上疼痛を増やさないように生活を送れることを考えてもらいました。

対応は下手でしたが、看護師さんとPTの間で、施設方向が妥当であることと目標については共通認識が得られたので、ここで信念対立解明に至ったと考えられます。


医師については、看護師から家族と介護力の状況共有をしてもらいます。


そして、最悪の事態として考えられる、「施設が決まる時間までのとりあえずの自宅退院」ということを予測して、介護保険でのサービス利用で可能な自宅での介護について考えてもらいました。


1人で考え込まずに、相談してくれたPTの勇気に感謝します。


本人の拒否は、低下した認知機能のせいじゃない。


本人の低下した認知機能と元々のパーソナリティを理解できずに、失礼な対応をしてしまった、僕らにあると考えると改善の余地がありますよ。


それでは。



suma's  occupation






suma's Occupationー作業療法を楽しむためにー

日々積み重なる作業、そして繰り返される日常 その作業-Occupation-にどんな意味があるのか、僕達に何をもたらすのか 僕は作業療法士のsuma 僕が考える作業-Occupation-について、書き綴ります

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